【世界最高峰の天文研究】銀河・ブラックホールの謎を解き明かす-岩手「国立天文台水沢」-

      2019/04/10

スポンサーリンク

 

(左から舟山弘志広報委員長、秦和弘助教、花田英夫准教授。後ろに見えるのが、施設内にある直径約20メートルの電波望遠鏡)

 

岩手県奥州市水沢区星ガ丘町。

少し小高い住宅街を進んだ先に、高い木々に囲まれた広大な敷地が広がっている。

「国立天文台 水沢」。

世界的な天文研究者が集い、日夜、先進的な天文研究が行われているこの研究所は、

前身となる旧緯度観測所の開設から約120年もの間、絶えず天体の観測を続けている。

 

VLBI(※)観測の世界的拠点のひとつである「水沢VLBI観測所」を抱え、

国立天文台の「月・惑星探査検討室」(RISE)の一翼を担う、国内有数の天文研究施設だ。

 

「銀河鉄道の夜」などで有名な詩人・童謡作家の宮澤賢治(岩手県花巻市出身、1896~1933年)との繋がりも深く、

作品の構想に大きな影響を与えたことでも知られている。

 

今回、自然科学研究機構国立天文台の「RISE月惑星探査検討室」花田英夫准教授、同「水沢VLBI観測所」秦和弘助教、同「水沢VLBI観測所」舟山弘志広報委員長に取材に応じて頂き、

「国立天文台 水沢」の歴史、電波望遠鏡を使った「VLBI観測」など最先端の天文研究について話を聞いた。

(※)「VLBI」 Very Long Baseline Interferometry(超長基線電波干渉計)

とても遠い場所にある複数の電波望遠鏡をつないで大きな望遠鏡に匹敵する解像度を得る観測技術。

 

人間の視力で換算すると「10万」に相当 電波望遠鏡を使った「VLBI」観測とは?

(岩手県奥州市「国立天文台水沢」敷地内にある、直径20メートルの電波望遠鏡)

 

 

「水沢VLBI観測所」は、「VERA」(VLBI Exploration of Radio Astrometry)プロジェクトの中心的な役割を担う。

「天文広域精測望遠鏡」とも呼ばれるこのプロジェクト。

日本国内で、電波望遠鏡を広範囲に配置し(水沢、入来、小笠原、石垣島の4局)、ネットワークシステムを構築することで、

望遠鏡同士の距離を直径とする電波望遠鏡と、等価な解像度を発揮させるというもの。

 

上記4つの観測所は、最長で約2300km(水沢~石垣島)離れている。

つまり、直径(皿)が約2300kmの超巨大な電波望遠鏡で、1つの天体を見ていることとなる。

精度で言えば、地球の地表から、月面上の一円玉を判別できるほどの性能を持つ。

「人間の視力で換算すれば、10万に相当する」(秦助教)

というから驚きだ。

 

ちなみに、家庭用の一般的な望遠鏡の「視力」は、およそ100~200。

可視光を利用した世界最大クラスの光学望遠鏡は、日本の国立天文台が持つ「すばる望遠鏡」(ハワイ観測所)だが、

その「視力」は、およそ1000。

これと比較しても、日本における「VERA」の観測ネットワークが、どれだけ圧倒的な性能を誇っているのかが分かるだろう。

スポンサーリンク

 

(出典:pixabay)

 

「VERAプロジェクトの元々の発端は、「天の川銀河の地図を作る」ということにありました。

世界地図の宇宙版と考えて頂ければ良いと思います。

そもそも、銀河がどうやって出来上がったのか。

我々は地球に住んでいるけれども、地球という天体は、銀河の中でどういう存在なのでしょうか。

地球が銀河の中のどこにあって、将来、どういった運命を辿るのか。

さらにはひょっとすると、地球と全く同じような環境にある天体が銀河の別の場所にあるかも知れない。

自分のことを知るためには、やはり、外を知る必要があるということです」(秦助教)

 

銀河の中には、約1000億個の星がある。

このうち、数百の天体を選んで、それらの星々が銀河のどこにあるのかを正確に割り出し、3次元の地図(立体地図)を作る。

「天文学で最も難しい課題の1つは、地球からの距離を測定すること」(秦助教)であり、

それに特化させたのが「VERA」プロジェクトだ。

既に約100天体について、地球からどれくらいの距離にあり、かつ、どの方角にあるのかについて、

正確に把握することに成功している。

 

 

一方で、観測する波長が電波であることなどから、電波望遠鏡単体ではさほどの「視力」は得られない。

「水沢の望遠鏡は直径20メートルありますが、単体では人間の目と同じくらい。

視力で言えば0.5程度でしょう」(秦助教)

 

そうなると、距離に比例して精度が上がる電波望遠鏡のネットワーク(VLBI)は、

日本国内にとどまらず、必然的に大陸間のネットワークへと拡大されていく。

 

現在、秦助教が中心となって進めている「東アジアVLBIネットワーク計画」(EAVN)も、その1つだ。

「VERAは日本だけでしたが、韓国、中国の観測所と協力することによって、

もっと大きな望遠鏡を作っていこうという、国際協力に基づく電波天文研究です」(秦助教)

 

(チリ・アカタマ砂漠、出典:pixabay)

 

さらに、日本、北米、ヨーロッパ、チリなどが中心となって進める国際共同プロジェクトが、「ALMA」(※)である。

チリのアタカマ高地に、66台の電波望遠鏡を建設した大型のプロジェクト。

「今後、このような世界規模の共同研究は、更に進んで行くでしょう」(秦助教)

※ 略称の「ALMA」とは、スペイン語で「魂」や「いとしい人」を意味する単語である。

スポンサーリンク

次ページ 「ブラックホールの写真」を撮る? ブラックホール研究の最前線とは・・・

1 2 3

 - インタビュー, ヘッドライン, 社会ニュース