【連載】「一帯一路」の輪郭(4)中・モ・ロ経済回廊は成功するのか(福島大・朱准教授)

      2019/07/18

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日本と韓国に求められるもの

ウラジオストク市内 https://pixabay.com

 

同回廊の成功を中・モ・ロ3カ国だけで成し遂げるのは困難だ。

地元経済に目に見えるメリットが出る仕組みが必要だが、そこで重要なのは日本と韓国の関わりだ。

現在、例えばウラジオストクなどロシア極東の都市には、日本や韓国製の日用品が多く流通している。

次は同回廊を上手く利用して、港から離れた地域にも流通させる。

これは日本・韓国の企業はもちろん、中・モ・ロ3カ国の地域住民にとっても大きなメリットとなろう。

 

日本からすれば、同地域で新たな物流ルートを開拓するなど、積極的にかかわる必要はない。

ただ、同回廊がスムーズに動き、鉄道の定期便が増えるのかどうか、注意深く見守る必要がある。

上手く回るようになれば、あとはロシア極東から日本製品を鉄道コンテナに乗せるだけだ。

現在、フェリーを使って日本からヨーロッパに荷物を運ぶのに、およそ30日~45日程度かかっている。

しかし、同回廊に沿って鉄道で運ぶと10日~15日程度と、輸送時間はコンテナ船の約3分の1になる。

日本はコストをかけずに第2(または第3)の物流ルートとして同回廊を活用すれば良い。

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「中国の成熟」が対外経済協力を阻むというパラドクス

https://pixabay.com

 

中国は経済的に豊かになった。

IMFの統計によれば、2018年の中国の1人あたりGDPは約10088ドル。ロシアは約11947ドルであり、さほど変わらない。

今や「中国では収入が少ないから、ロシアでひと儲けしよう」と考える中国人はほとんどいなくなった。

豊かさを求めて越境する中国人が減ったのだ。

 

一帯一路をめぐっては「中国人を移住させるため」といった批判もある。

しかし、中国が経済発展を遂げた今、その必要性はむしろ薄れている。

反対に、中国では賃金が上昇したがロシアに比べて物価は安いので、ロシア人が中国に来るメリットはあるかも知れない。

これは「中国大陸と香港」の関係でも同じだ。

かつて中国大陸の人々は、ビジネスチャンスや生活の豊かさを求めて香港に押し寄せた。

しかし、今やその逆で、香港から広東省に向かう流れが強まっている。

 

中国の国内市場は拡大を続ける。

同時に、中国にとっての対外経済交流のウェイトはどんどん下がっていく。

中国国内の企業家たちは冷静だ。

それぞれの経済回廊が通る地域であっても、皆が手放しで盛り上がっているわけではない。

中国は、あらゆる意味で成熟した国になりつつある。

余程のインセンティブがない限り、中国の企業家たちの腰は上がらない。

それが「一帯一路」と名の付くものであっても、だ。

 

朱 永浩(ずう よんほ)

福島大学准教授、博士(商学)。専門はアジア経済論、中国経済論。最近では、北東アジア地域経済協力および「一帯一路」の研究に注力し、東南アジアにも調査の旅に出る。著書に、『中国東北経済の展開-北東アジアの新時代』(日本評論社、2013年、単著)、『アジア共同体構想と地域協力の展開』(文眞堂、2018年、編著)などがある。

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https://www.levada.ru/2016/04/07/mezhdunarodnye-otnosheniya-2/

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