【連載】「一帯一路」の輪郭(5)「新ユーラシアランドブリッジ」経済回廊(福島大・朱教授)

   

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「中欧班列」が抱える課題とは

四川料理 出典:https://pixabay.com

 

「中欧班列」の課題を2つ挙げたい。

1つは、往復の貨物積載率を上げることだ。

荷主には関係のない話だが、貨物を運ぶことで利益を得る鉄道会社からすれば、空のコンテナを運ぶことは赤字にしかならない。

しかも「中欧班列」と書かれた専用コンテナを使っている以上、コンテナを循環させなければならず、例え空であっても必ず持って帰らなければならない(例えば、中央アジア向けの貨物コンテナは、荷物を降ろした後、帰りの輸送費用を勘案し現地で破棄することさえある)。

特に欧州からの貨物積載率を向上させることは、「中欧班列」運営企業の経営や長期的な輸送運賃の安定にとって重要な課題だ。

「推進“一帯一路”建設工作領導小組弁公室」が2019年に公表した「中欧班列」の貨物積載率に関するデータでは、中国発が94%、中国着が71%となっている。

関係者へのヒアリングでも、このアンバランスは当面継続するとの見通しだが、数年前は3対1から4対1であったことを考えれば、欧州からの貨物積載率は上昇傾向にある。

 

2つ目は、コンテナを扱う物流施設のキャパシティ不足という課題だ。

今回視察した成都のコンテナヤードは、今から十数年前にできたものだった。

正確に言うと、これは一帯一路や「中欧班列」のために造られたものではない。

ヤードの建設当時に想定されていたのは、中国国内向け貨物コンテナの集積だった。

人口3千万の重慶(郊外人口を含む)、また1千万の成都は四川料理に代表される美食の街として知られるが、食材のほとんどが外部から運ばれている。

一年中、色々な食材が大量に入ってくる巨大な消費都市、だから国内貨物だけでも相当な量になる。

地元政府にとって「中欧班列」も大事だが、それ以上に重要なのは市民の生活だ。

数千万人の市民の胃袋を満たすのは並大抵のことではない。

実際、コンテナヤードに置かれる貨物のほとんどが国内貨物であり、「中欧班列」専用スペースは全体の1割未満であった。

このまま行けばキャパシティオーバーに陥る可能性は否定できず、「中欧班列」の利用拡大を見越すならば、新たな物流施設の建設が必要となるだろう。

 

「新ユーラシアランドブリッジ」は成功するのか

出典:https://pixabay.com

 

 

6本の経済回廊の実態を見ると、既に輸送を開始しているケース、テスト段階で実験的な輸送を行っているケース、一方ではまだ鉄道の敷設すら終わっていないケースが混在し、しばらくはこの状況が続くと見ている。

その中にあって「新ユーラシアランドブリッジ」は、既に重慶・成都~欧州の貨物便が安定的な輸送を行っており、6本の回廊の中では、まさに主軸と言える存在だ。

経済性についても、重慶・成都が持つ特殊な条件によって実際のニーズがあり、商業ベースで運用できる可能性は他経済回廊より高いと見るべきだ。

加えて現地では、重慶と成都の両地元政府による激しい競争が繰り広げられている。

「中欧班列」の起点としての地位をめぐる争いだ。

中央政府は直接タッチせず、複数を競合・淘汰させ、最終的に競争力の高い方が残る。

市場主義的ではあるが、実に中国らしい手法と言えよう。

一帯一路による内陸の経済発展は、外資にとってのビジネスチャンス

成都のビル街 出典:https://pixabay.com

 

陸続きの貿易を主眼に置いた「新ユーラシアランドブリッジ」経済回廊の成否は、中国政府の長年にわたる重要課題である「内陸地域の経済振興」のカギを握っている。

同時に、内陸の各都市にとっては死活問題でもある。

一帯一路をめぐっては、海洋進出や海外でのインフラ建設をめぐる問題に目が行きがちだ。

しかし、中国が広大な国土を持つ巨大な大陸国家であることを忘れてはならない。

中国政府が内陸地域の経済振興をどう実現していくのかは、一帯一路全体を見る上で欠かすことのできない視点だ。

翻って、内陸部の急成長は日本企業を含めた外資にとってのビジネスチャンスでもある。

先見性を持ったいくつかの大企業は、前述した内陸の大都市の特殊性を踏まえ、既に大規模で積極的な投資を始めているのだ。

 

朱 永浩(ずう よんほ)

福島大学准教授、博士(商学)。専門はアジア経済論、中国経済論。最近では、北東アジア地域経済協力および「一帯一路」の研究に注力し、東南アジアにも調査の旅に出る。著書に『中国東北経済の展開-北東アジアの新時代』(日本評論社、2013年、単著)、『アジア共同体構想と地域協力の展開』(文眞堂、2018年、編著)などがある。

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https://www.levada.ru/2016/04/07/mezhdunarodnye-otnosheniya-2/

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