【連載】「一帯一路」の輪郭(5)「新ユーラシアランドブリッジ」経済回廊(福島大・朱教授)

   

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内陸部における「後発の優位性」

急速な発展を遂げる成都 出典:https://pixabay.com

 

 

「中国の経済成長」とひと言で言っても、地域ごとに様々な傾向がある。

近年、沿海部の大都市の経済成長が頭打ちとなっている中、重慶や成都などの内陸都市は総じて2ケタ成長を記録している。

今後の中国経済の見通しを考える時、悲観論者の多くは沿海部を、また楽観論者の大半は内陸部に注目していると言って良いだろう。

近年の内陸部の高成長には「後発の優位性」が大きく作用している。

沿海部の成長を見て、その教訓を踏まえた都市開発をしているため、より効率的な経済発展が可能なのだ。

例えば道路などのインフラは皆新しく、また幅が広い。今回の調査では日系小売業の物流倉庫も視察したが、非常に広大で、かつ最新のオートメーションテクノロジーが活用されており、総じて円滑な物流が実現している。

また今話題の通信機器大手・ファーウェイも成都に多くの開発拠点を置いている。そもそも四川省には理工系の大学が多く、優秀なIT人材の供給が可能だ。

一昔前であれば「内陸からどうやって外にモノ(商品)を運ぶのか」という点で、中国の内陸部は常にボトルネックとして挙げられていたが、今や外資を含め投資が沿海部から内陸部へシフトしつつある。

最近では「米中摩擦によって得をする地域はどこか」という議論も出ているが、伝統的に対米輸出など無縁である中国内陸部は、それに該当するのかも知れない。

 

欧州向けコンテナ「中欧班列」はなぜ増えているのか

出典:https://pixabay.com

 

 

「新ユーラシアランドブリッジ」経済回廊の対欧州輸送を一手に担うのが、2011年にスタートした国際貨物便「中欧班列」だ。

「中欧班列」は「中国鉄道総公司」(民営企業)が全体を総括し、発着駅が所在する都市のプラットフォーム企業が実際の営業・運営を行う。

今回、成都の国際鉄道ターミナル「青白江国際鉄道港」を訪問し「中欧班列」担当者から話を聞くことができた。

それによると、2018年に成都から出発した「中欧班列」は2619便、1日7便以上出ている計算になる。

また、これまでの総便数は約1万3千便に上るが、特にここ3年間で急増している。

では、なぜ内陸部発の「中欧班列」が急増したのか。

成都や重慶は最寄りの港から千キロ以上も離れている。

未だ世界の物流の主軸は海運であるため、地元で作った商品を港まで運び海外に輸出するには、内陸部は非常に不利な立場に置かれている。

そこで必然的に需要が生まれるのが、鉄道による国際貨物輸送だ。

例えば重慶や成都で盛り上がっている自動車産業では、在庫=コストと考えられている。

地元を出発する欧州向けの貨物鉄道が定期的に運行され、常に商品を輸出できる環境があれば、自然に在庫を減らすことができる。

鉄道貨物の運賃は船便の3倍から5倍と言われているが(※)、削減が見込める在庫コストと、船便と鉄道輸送の運賃の差額、それらを相殺して採算が取れるようになれば、企業にとっては大きなメリットが生まれる。

そもそも自動車や電子機器は高付加価値商品であり、多少運賃が高くてもその分を相殺しやすいため、割高な鉄道輸送に向く。

後発の優位性による良好な物流環境、内陸であるが故の鉄道需要、そして鉄道輸送に適した自動車産業の発展、これらの条件が重なり合う特殊な環境が、重慶・成都を出発点とする「中欧班列」の急増を生んでいる。

(※)「中欧班列」の運賃について、2017年8月29日に中国国内で放映されたニュース報道で「重慶~デュースブルク(ドイツ)」間のコンテナ1本あたり(40フィート)の料金が「約6000米ドル」と報じられたが、現状は不明。船便、鉄道貨物を問わず、物流における顧客獲得競争は激しく、多くの場合、地元政府からの補助金が投入されており、実質的な運賃は殆ど公にならない。

 

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