単なる領土問題ではない北方領土

   

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択捉島を訪れたメドベージェフ首相

ロシアのメドベージェフ首相は8月2日、北方領土の択捉島を4年ぶりに訪問した。メドベージェフ首相は択捉島に滞在時にロシアメディアの取材に応じ、「ここは紛れもなくロシアの領土であり、日本が抗議すれば抗議するほど、ロシアの指導者たちが北方領土を訪問する機会は増えるだろう」と日本を牽制した。今回の訪問は、ロシア軍機の竹島上空での領空侵犯の10日後に実現した。当然のことながら、領空侵犯後の日本の反応を見て、さらに日本を牽制するために訪問したことは間違いない。しかし、近年の安全保障情勢をみてくると、北方領土とは単なる領土問題だけでなく、2つの違った側面が見えてくる。

北方領土問題の背後でロシアが警戒する存在とは

安倍首相は去年11月、シンガポールでプーチン大統領と会談した際、安倍首相がロシアを訪問すること、また、1956年の日ソ共同宣言に基づいて、平和条約の締結、北方領土の解決に向けて交渉を加速化させることが合意された。しかし、プーチン大統領はその翌日、「日ソ共同宣言には平和条約の締結後、歯舞・色丹の2島を日本側に引き渡す文言が明記されているが、何を根拠に、またどちらの主権になるかなどは書かれていない。よって今後さらなる議論が必要だ」との認識を示したのだ。
ロシアのこのような姿勢は、今後いっそう強くなるだろう。日本人からすると、北方領土はまさしく“ロシアとの領土問題”だが、ロシアからするとそれ以上に重要な理由がある。そして、それは大国間関係の変化と共に、ロシアにとってはより重要な問題となっている。仮に、ロシアが4島全てを日本に返還したら、それは日本にとっては悲願の領土返還となるが、ロシアにとっては安全保障上の大きな問題を生み出すことになる。4島返還によって主権や施政権が日本に戻ってくることになれば、それは安全保障上、日米安全保障条約第5条に基づく米軍の対日防衛義務の適用範囲になることを意味する。要は、米国の軍事的影響力の範囲が択捉島まで北上することを意味し、北太平洋で影響力を維持したいロシアとしては絶対に避けたいシナリオである。北方領土とは、ロシアにとっては米国との勢力圏争いの最前線である。こう考えると、8月2日のメドベージェフ首相の日本を牽制する発言は、実は間接的には米国への牽制メッセージと捉えることができる。

近隣諸国を巻き込んでさらに状況は複雑化をきわめる

そして、もう1つの側面がある。北方領土では近年、ロシアが中国企業や韓国企業の誘致を強化し、ロシアが発給するビザを受けて、多くの北朝鮮労働者が働いている。2011年5月には、「独島領土守護対策特別委員会」に所属する韓国の国会議員3人も国後島を訪問した。なぜ、ロシアは中国や韓国を北方領土に巻き込もうとするのか。ロシアはこの3カ国が、それぞれ日本と領土問題を抱えていることを知っている。北方領土に中国や韓国を巻き込んだら、日本に大きな牽制メッセージになる。中国や韓国にとっても、北方領土に接近することにはメリットがあり、3カ国の思惑は一致している。

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