香港が直面するアイデンティティ危機

      2019/10/05

スポンサーリンク

言うまでもなく、昨今の香港は大きな危機に直面している。北京は、人民解放軍を香港と境界を接する深センに大量に送り込み、香港への牽制を強めている。現在、香港から境界の駅「羅湖駅」のイミグレを通過して中国本土に入る際、パスポートともに携帯電話の写真やデータもチェックされ、香港デモに関係する写真などを保持していた場合、別室で中国当局から尋問を受けることもあるという。

筆者が遭遇したデモ隊

滞在中も、平日に1回だけデモ隊に遭遇した。8月28日、香港警察による女性デモ参加者への性暴力が頻発していることに抗議する3万人規模の抗議デモが行われたが、その後、筆者は偶然にも地下鉄車内で抗議デモから帰る若者グループに遭遇した。若者たちは、同車内で香港警察へ抗議の意志を示す威勢のいい声で一斉に騒ぐなどした。警官隊と衝突するあのデモ隊を見ているかのようだったが、車内にいた乗客からは一部で拍手の音も聞こえた。
また、平日のお昼、香港島東部にあるFortress hill駅近くでは、「Democracy for Hong Kong」や「五大訴求」などと書かれた黒い垂れ幕を見つけた。それらは中国への抵抗を示すものだが、平日では週末のような大きな衝突は発生していないが、香港人の強いアイデンティティや北京への抵抗といった雰囲気は平日でも十分に感じられた。

逃亡犯条例で爆発した香港人の不満

上記のことは、あくまでも8月25日から一週間滞在した期間で遭遇したことに過ぎない。しかし、現地で実感した立場から言うと、香港人の北京への不満は長年のもので、逃亡犯条例のみが原因ではないと思う。1997年のイギリスからの返還以来、積もりに積もった香港人の不満が、逃亡犯条例というケースを起爆剤として一気に爆発したようにも感じられる。
今後とも香港の抵抗は続くことだろう。仮に終息したとしても、それは一時的な休戦みたいなもので、再び抵抗の声が高まることは想像に難くない。
香港では、フェイスブックやツイッター、LINEやインスタグラムなどのSNSは十分に使用できるが、そこから電車で北に30分程度行けば、GoogleやYahooなどはそもそも使えない世界だ。そういった現実の中で若い世代の香港人たちが違和感を覚えないはずがない。
香港が国際金融都市として、世界と多くのコネクティビティを持っているからこそ、北京としても現在の香港情勢は難しい問題だろう。ウイグルやチベットではそもそも国際的なコネクティビティが極めて少ないので、北京はあるがままの政策をとってきた。香港の人々は世界に自らの現状を強く訴えかけている。現地の若者からも、今しかチャンスはない!という危機感も感じられた。覆面禁止法という新たな動きが展開があった香港の今後の動向に引き続き注目していきたい。

 - アジアのニュース, アジア・世界ニュース