2019年シャングリラ・ダイアローグを振り返る

   

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会議が開かれたシンガポールのシャングリラホテル(出典:シャングリラホテル シンガポール公式サイト)

会議が開かれたシンガポールのシャングリラホテル(出典:シャングリラホテル シンガポール公式サイト)

今年も毎年恒例のアジア安全保障会議(通称、シャングリラ・ダイアローグ)が、5月31日から6月2日にかけて、シンガポールのシャングリラホテルで開催された。今年も、日本や米国、中国や韓国、オーストラリアや東南アジア諸国の政府高官や防衛当局者らが参加し、各国から防衛、安全保障上の主張が繰り広げられた。近年のシャングリラ・ダイアローグでは、米中両国が相互を牽制し、その他の国々が米中を交えた軍事衝突の懸念を表明するというのが、一種のリズムになっている。

周辺諸国との緊張を高める中国の主張

全体を見ると、今年の会議で何か大きな動きが見えたわけではない。しかし、中国の主張には改めて強い懸念を示さざるを得ないのが現状だ。中国の魏鳳和国務委員兼国防相は2日、「台湾を中国から分離させる動きがあるならば、中国軍は如何なる犠牲を惜しまず全力で戦い抜く」と強調し、南シナ海では、「我が国は主権に基づき、領有権を有する場所で人工島などを建設しているに過ぎない」と主張した。
これについては他の国々から大きな反発の声が出た。米国のシャナハン国防大臣代行は、「中国はルールに基づいた行動をとっていく必要があり、それまで我々は中国を信用することはできない」との意思を示し、フィリピンやベトナム、インドネシアの国防大臣からは、「中国は九段線の無効を言い渡した2016年の仲裁裁判を認めていない」、「このままだといっそう緊張が高まる」など強い懸念が示された。
中国は長年、台湾を核心的利益と位置づけている。核心的利益とは、北京からすると絶対に譲れない領域であり、それに対しては軍事的行動も厭わない姿勢だ。台湾問題で怖いのは、米国や日本などは国際問題と理解している一方、北京が国内問題と理解していることだ。この認識のギャップは、仮に偶発的衝突が生じた場合、衝突の激化に繋がりかねない。

シャングリラ・ダイアローグの意義

シャングリラ・ダイアローグには、大臣レベルも出席し、インド・太平洋地域の安全保障においては最も大きな国際会議になっている。そういう場で、対立が深まる米国と中国の防衛幹部たちが、お互いの主張を目の前で聞き、また、直接会って色々と議論を重ねることには意義がある。安全保障という国家の根幹を成す重要な問題であっても、それを動かすのは防衛当局者、政策担当者であり、相互の個人的な関係も大きく影響する。しかし、そのシャングリラ・ダイアローグに中国の防衛幹部らが出席しないような事態が今後あれば、それは極めて深刻な事態といっていいだろう。シャングリラ・ダイアローグは米中両国の政治的緊張を抑える目的も内在しており、シャングリラ・ダイアローグを対中包囲網という一色で色付けることは控えるべきだ。同会議や安倍首相が唱えるインド・太平洋構想は、中国を意識した競争的な意味合いが過剰に強いものになってはならない。

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