北極海を巡る米中対立

   

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北極海の春の海氷の融解(アラスカ北方沿岸沖)

北極海の春の海氷の融解(アラスカ北方沿岸沖)

米中の攻防は、貿易戦争だけでなく、北極海でも生じようとしている。米国のポンペオ国務長官は5月6日、訪問先のフィンランドで北極海を巡る情勢について演説し、「北極海は新たな戦略空間となっているが、関係各国は共通のルールに基づいて行動するべきだ」との認識を示し、また、「北極海を新たな南シナ海にしてはならない」と中国を強くけん制した。

進む北極海の海氷融解と中国の進出

近年、北極海の海氷融解が進み、航路やその下に眠る天然資源を巡って、国家間の獲得競争が激しくなっている。北極海航路は、パナマ運河やスエズ運河を通過する航路に比べて大幅なショートカットになり、また、世界で採取されていない石油の13%、天然ガスの30%が北極海に眠っているという。

近年、中国の北極海進出は著しい。北京は2018年1月下旬、北極開拓についての戦略を掲げた「北極白書」を初めて発表し、ロシア側の北極海沿岸を通ってアジアと欧州を結ぶ第3の一帯一路、「氷上のシルクロード」構想を打ち出した。中国は、ロシアやノルウェー沿岸、アイスランドやデンマーク領グリーンランドへ投資を拡大したり、独自の砕氷船「雪竜」で北極海横断を成功させたりするなど、積極的な関与を見せている。また、米国とロシア、ノルウェーとデンマーク、カナダの沿岸国を加盟国とする北極評議会にも、中国はオブザーバー国として長年参加し、北極開発のルール作りで影響力を高めようとしている。
また、債務の罠に陥っているスリランカやパキスタンのように、中国はカナダやノルウェー、アイスランドやデンマーク(グリーンランド)へ同様のアプローチを仕掛け、影響力を高めようとすることは想像に難くない。

中国に警戒感を強める米国

こういった中国の姿勢に対し、米国は警戒感を強めている。米国は中国の関与を排除したく、北極海が新たな米中対立の場とならないよう、安全保障的な視点から北極への関与を強めようとしている。
北極海は、経済や環境といった側面だけでなく、安全保障や軍事上の戦略空間となりつつある。これまでの国際政治は、いってみれば北極海は凍っているという前提で語られてきたのであり、海氷が溶けて船(海軍)が通過できるようになれば、米中(露)間の競争は北極海でも生じるようになる。

日本にも大きな影響をもたらす中国の北極海進出

そして、これは日本にとっても極めて大きい問題である。中国が北極政策を強化するならば、その船は必然的に日本近海を通ることになる。具体的には、九州の北にある対馬海峡から日本海に出て、宗谷海峡や津軽海峡を抜けベーリング海に抜けるルートだ。よって、中国の北極シーレーンは、日本の海洋安全保障秩序に対して、経済的、そして軍事的な脅威になる可能性がある。それを抑止する意味でも、中国公船や人民解放軍の北極海への展開に関する情報共有、海上監視などにおいて、日本は米国と協力をいっそう密にするべきだろう。

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