スリランカ同時多発テロ事件を振り返って

   

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スリランカ テロ

(photo by Rehman A. and Azeez A.)

4月21日、最大の都市コロンボにある高級ホテルやキリスト教教会など8カ所を狙った同時多発テロ事件が発生し、これまでに258人が死亡、500人以上が負傷した。死傷者には、日本人5人(うち1人死亡)も含まれた。この事件は、2002年10月、インドネシア・バリ島で発生したイスラム過激派「ジェマーイスラミア」によるテロの犠牲者202人(日本人も2人死亡)を上回る事件となった。
同テロ事件では、現在も捜査が行われており、依然として不明点が多い。しかし、この事件からはどんなことが読み取れるのだろうか。ここでは、2つのポイントを挙げたい。

スリランカ国内に浸透するISの影響力

まず、この事件では、国内のイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」の実行、そしてイスラム国(IS)の関与が濃厚となっている。スリランカのテロといえば、これまで、少数派タミル人の分離独立派「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が主に議論されてきたが、この問題は2009年に終結し、それ以降、国内で目立ったテロの動きはなかった。仮に、LTTEの残党がテロを起こすならば、政府が軍、シンハラ人など“国内”権益を狙うはずであり、今回のように、欧米人やキリスト教権益を狙うことは考えにくい。欧米人など外国人が多く宿泊するホテル、イースター(復活祭)の祈りを行うキリスト教会を同時多発的に狙う計画性、また、出来るだけ多くの犠牲者を出そうとするその暴力性や無差別性を考慮すると、暴力的な過激思想を貫くISの関与を想像するに難くない。

クライストチャーチテロへの報復か イデオロギー上の対立が深刻に

また、今回のテロでは、今年3月15日にニュージーランド・クライストチャーチで発した白人至上主義テロへの報復との報道がある。これについても、現在、警察当局による捜査が進んでいる。スリランカ同時多発テロの実行犯たちが、クライストチャーチテロへの報復を意識して実行した可能性もあるが、より重要なのは、イスラム過激主義VS白人至上主義に代表される極右主義とのイデオロギー上の対立が生じていることだ。ISのテロや欧州へ押し寄せる移民・難民などの問題が影響して、近年、欧米では移民・難民を標的とした極右テロが目立っている。クライストチャーチテロも含め、白人至上主義者たちは、白人の国が侵略されているなどと自らの正当性を強調し、イスラム教モスクやシナゴーク(ユダヤ教礼拝所)などを襲撃している。一方、クライストチャーチテロ後には、アルカイダやISの組織が一斉に欧米やイスラエルへの報復を呼び掛ける声明を出した。

今回のテロがクライストチャーチテロへの直接的報復かは定かではない。しかし、イスラム過激主義と白人極右主義が対立軸に位置し、それが暴力の連鎖に拍車を掛けていることが懸念される。

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