テロ事件認定におけるイスラム教徒が抱える問題

   

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さて、前回に続き、新年早々に発生した原宿車両突っ込み事件の続きを述べたい。前回の論考でも言及したように、竹下通りで発生したこの事件は、近年欧州で繰り返し発生する、車両突っ込み“テロ”事件と何ら外形的に変わりはない。違うのは、地元治安当局によってテロ事件と断定されているかいないかだ。フランスのニースやバルセロナ、ベルリンで発生した車両突っ込みでは、実行犯がイスラム国(IS)やアルカイダなどが掲げる暴力的な過激主義を支持し、または影響を受けるなど、政治的なバックグランドがあることがポイントである。それがテロ行為と断定される決定的な要因となっており、反対にそれらをテロ事件ではないとする主張は見たことはない。

テロ=イスラム教徒によるものだけではない

イスラム教 ムスリム

しかし、9.11以降のテロ情勢をウォッチングしてくると、筆者は1つの懸念に辿り着く。近年、欧米ではイスラム過激主義によるテロだけでなく、移民、難民排斥などを訴える右派的な、白人至上主義的なテロ事件が増加傾向にある。特に、米国ではイスラム過激主義のテロよりも、右派的なテロ事件の件数の方が多い。

しかし、対テロ戦争などイスラム過激派が関連するテロが長年国際政治の中心的トピックになると、どうも、イスラム教やイスラム教徒がテロと結び付けられる風潮が自然に生まれているように感じる。特に欧米世界ではその風潮が強く漂っており、イスラム教のモスクやユダヤ教のシナゴーク(集会所)への襲撃事件があっても、イスラム過激主義関連のテロ事件と比べると、それらは地元治安当局にもテロ行為と断定されにくい現状がある。

“ホームグロウン”や“ローンウルフ”という言葉も流行のようにメディアで使われるが、そのような言葉も、イスラム教やイスラム教徒に結び付けられやすい。そのような事件が欧米で頻発したことが一因であろうが、ホームグロウンは「地元育ちの」、ローンウルフは「一匹狼的な」という意味で、そこにはイスラムに限定した意味など全くない。

筆者がここで指摘したことは、当然のことであろうし、そんなことは言うまでもないと思う人もいるだろう。しかし、来年に東京五輪、今年にもラグビーワールドカップやG20など大きな国際イベントを迎える我が国としては、もう1度冷静になって近年の国際テロ情勢を振り返り、テロという行為がどんなもので、どういう問題を抱えているかなどを学ぶ必要がある。「テロリズム」という言葉の意味の一人歩きはあってはならない。

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